『あなたがそこにいるだけで私の力になっているんです』

天候の良い日は車のフロントガラスに納まらないほどの山々を鑑賞できる。
送迎に出て事業所に戻ってくると20㎞~30㎞程の距離を走っていた。
二王子山とその向こうに見える飯豊連峰。方向が変われば加治山や五頭山も見える。
このような大自然を目の前にすると、ついつい深呼吸をしてしまう。
何と素晴らしい景色であろうか…。幸せである。
木漏れ日のさす山道を走ることもあった。そこを抜けて左折すると村が見えてくる。
時には田んぼの中を日本猿が群れで歩いている姿を目にしたこともあった。
日本猿の体格は良く、なんとデカいこと！！驚いた。

今回はこの素晴らしい環境の中に生活しているご利用者にスポットを当ててみた。
送迎では、ご利用者やご家族と色々な話を交わす。その心の傍らにあるものをご紹介したい。

♦S様（80歳代）をご紹介♦
”あんぜん橋”を渡り、五十公野山と加治山に囲まれた道をまっすぐ二王子山方向へ直進。
季節によって田んぼの様子や山の色鮮やかな景色の変化を感じさせられる。
そんな景色を眺めながら、田んぼの脇の歩道で杖ついてゆっくりと散歩するS様。
夫と二人で建てたこの家。もう夫は亡くなってしまったが思い出はいっぱい詰まっている。
時にはアルバムをめくり、夫や友人と一緒に撮った写真を見てあの時を思い出すこともある。
現在は長男夫婦と暮らしている。お嫁さんはいつもS様の体のことを心配してくれる。
家族はとっても大事！！　お嫁さんの笑顔と優しさに支えられて
「私は、今を楽しむことができているんですよ♪」と言わんばかりに笑ってくれる。



♦H様（ 70歳代）をご紹介♦
H様は妻と長男、長女の４人暮らし。病気をしてから妻はリハビリの協力を担ってくれている。
妻は、あっちへこっちへと車に乗せて走ってくれる。
家のテラスに小鳥を見つけた！
H様が小鳥を紹介してくれる。その様子を見て家の奥から娘さんが出てきてくれた。
暖かいところに生息する鳥で名前はマメルリハちゃん。



マメルリハちゃんは自身を人間と思っているそうだ。「ただいまー」というと
「お帰りー」等々…と立派気に何でも言葉を返してくれる。
こうした光景もH様にとっては大切な宝物。
家の近所に親戚が多いのも安心の一つとなっている。
「家族のために、いつまでも元気でいたい。」と願っている。



♦Y様（60歳代）をご紹介♦
新発田市の街を越えていくと田園風景と五頭山が見えてくる。
山の上にあるゴルフ場は奇麗に整備されていて色彩が良い。
あの正面の橋を越えたら温泉郷である。



Y様の家は大正４（1915）年に建てられ、約106年経つ。当時、旅館で繁盛していた。
Y様はこの旅館の長女、3代目女将である。お話上手で料理も上手い。
病気になって旅館を閉じてから今はお一人で暮らしている。
昔、利用してくれたお客さんが今でも訪ねてきてくれると懐かしそうに話していた。
この家はまだまだ生きているんだ！
さみしい時、悲しいことがあった時、辛いことがあった時、
いつもこの家は私を待っていてくれた。
「家は私を裏切らないからね…」と言う。
この家があるから私は元気を取り戻せる。
周囲の支えもあり、「先のことは自然に任せて感謝しながらいつも笑顔で諦めない気持ちで生きています。」と、
力を込めて話してくれた。



♦K様（70歳代）をご紹介♦
山の麓にある赤い屋根の建物。
童話『アルプスの少女ハイジ』のあの光景を思い浮かべてしまう。
この家に暮らしているのはK様と妻のお二人。
「この山は自慢の山です。書斎から眺める景色は実に素晴らしい」と教えてくれたK様。
そして、この辺にはクマや猪、猿も現れると聞いた。今年はまだ確認されていないらしい。
妻はいつも陽気。会う度にギアが入っている。
草刈り機を担いで大きな庭の畑の草を刈ったり、コロナ前はお一人で海外旅行。
妻は歌ったり踊ったり、とにかくパワフル。
K様はいつも笑って、とにかく笑って妻を応援する。
そして、Kさまの傍らで生活を支えているのは妻である。



子どもたちはそれぞれに家族を持ち、今はお二人。 二人で背中を押してあげたり、押してもらったり。
心配な時には黙ってどちらかが傍についていてくれる。
人の温かさ、家族の温かさ、たまらない！

♦今回改めて送迎での様子をまとめていく中で言葉では表せないものがあったということをお伝えしたいたいです。
それを一言で表現するのであれば、こんな言葉になるでしょうか‥。
「あなたがそこにいるだけで私の力になっているんです。」
今回ご紹介したご利用者とご家族の皆さんには気持ちよく受け入れていただき大変感謝しております。
貴重なお時間を本当にありがとうございました。