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家庭の医学

糖尿病があると転びやすい?

新潟リハビリテーション病院
[掲載日]2013.08.07
連日30度を超える日が続き、それだけでも体力が奪われやすい今日この頃ですが、お元気でお過ごしでしょうか。

糖尿病の治療として、運動療法が行われているのは、皆さんもよくご存知のとおりです。
今回は逆に、糖尿病があること自体が、歩行などの運動にどう影響を与えるか、ということについて述べてみます。

ベルギー大学のローマンさんらは、施設に入所している60歳以上の高齢者で
糖尿病のある56人と、糖尿病のない45人を比べてみました。
(これらの方は、特に脳卒中やパーキンソン病などの神経の病気に
 かかっていない方々だけです。)

歩行測定マットを使用して、これらの方の歩く速さや、歩幅などを測りました。
すると、糖尿病があるというだけで、特に脳卒中などに罹っていなくとも、
歩く速度が遅く、歩幅も小さくなることがわかりました。
また、糖尿病の方では、その歩幅も一定せず、バラバラの傾向がみられました。

次に、歩行中の課題として40から3を連続して引き算を行いながら歩いてもらうと、正常の方でも歩く速さは
遅くなり、歩幅も狭くなるのですが、糖尿病があるとさらにこの課題の影響が大きくなることがわかりました。
この他にも、糖尿病のある人が、糖尿病でない人と比べて、転倒しやすいという研究報告は多数あります。

なぜ、糖尿病があると転びやすくなるのでしょう?
これには、いろいろな理由があるのですが、主に、
1)糖尿病により、足や脚の知覚が鈍くなり、バランスをくずしやすくなる、
2)糖尿病になると、下肢の筋量・筋力・筋肉の質が低下する、
3)糖尿病があると、認知機能も低下して、周囲に注意が配りにくくなる、
の3つがあげられます。

注意が配りにくい状態の方に、歩行以外のものに気をとられる、ふらついてバランスを
崩すなどのいつもと違ったことが起きると、歩くことへの注意が薄れます。
そのために転倒される場合が非常に多いのです。

脳卒中後遺症でリハビリテーションのため入院されている方にも、糖尿病がある方は、多くいらっしゃいます。
やはり体幹のバランスが不安定のため、最初は座る姿勢を保持するのが難しい場合が多いようです。

糖尿病は、高血圧症とならんで、全身病とよく言われますが、血糖を丁度いい程度に調節してゆくことは、
病気の再発や合併症の予防だけでなく、こういった歩行能力や運動能力を維持するためにも大切なことなのです。

新潟リハビリテーション病院/リハビリテーション科医:小股 整
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