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健康コラム

家庭の医学

サスペンスドラマのような記憶喪失はあるのか

新潟リハビリテーション病院
[掲載日]2012.11.07
サスペンスドラマを見ていると、『非常にショックなことがあるために、その前後の記憶がなくなってしまった』って云う
設定ありますよね。現実はどうなんでしょう。

私は12歳の時、付属中学を受験しました。
その受験の帰りに踏切事故で人が轢かれるのを目の前で見ました。と言っても覚えていないのです。
そして前後の記憶も全然ないのです。中学受験したことも、合否も何も覚えていない。
記憶があるのが中学(どういう訳か東新中学に通っていました。付属落ちたの?)の1学期の終わりくらいからです。
要するに半年近い記憶が全くないのです。医学的に云うと解離性障害の一部の解離性健忘といいます。
ひどい人になると全人生の記憶が失われる場合もあるのです。そういう場合でも日常生活に必要な記憶は保たれているという
特異な状況となります。暴力を受けた人なども同様な記憶障害が生じる場合があります。

『心的外傷』とは、目に見えないけど致死的な傷なのです。
心は、こうした記憶を排除することにより生き延びようとします。
しかし、排除されてはいますが、深層心理の中に残り、不安感・焦燥感・抑うつ等の
感情だけが残存する形となります。

サスペンスドラマの崖っぷちで「私は何も覚えていないのよ。主人を殺したのは
一体誰なの?(実は自分が殺している)」なんてことはあるわけですよ。


新潟リハビリテーション病院/内科医:伊東浩志
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